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「クラシック音楽」

埋没し消えて行くのか、世界のクラシック音源

嶋田 淑之

ニューヨークのマンハッタンから遂に大型CDショップが完全に姿を消す。これは、英国系大手ヴァージン・メガストアのタイムズ・スクエア店が来春、閉店することが確定したことによる。
全世界のレコード・CD市場の低迷・衰退は、20年以上前から急速に進んでいたけれども、ロンドン、東京と並ぶ、「世界3大音楽市場」のひとつであるニューヨークも、遂に事実上、息の根が止まるというのは、非常にショッキングな出来事である。
衰退促進の決定打になったのは、インターネットで好きな音楽をダウンロードできる「オンライン・ミュージック」の普及だ。
レコード・CD販売の主力商品が、国や地域を問わず、ポップスなどの流行系の音楽、いうなれば、消耗品である以上、わざわざ大型CDショップに行かなくても、ダウンロードで十分というユーザー心理になるのは当然だ。こうして、レコード・CDショップの衰亡が加速化している。
その煽りをまともに喰らうのが、クラシック音楽市場である。クラシックの場合は、今流行っているものをダウンロードするなどというユーザー心理は働きようがない。そもそも流行ってなどいないのだから(苦笑)。
しかし、流行ってはいないとしても、芸術的・文化的価値の高い歴史遺産とも言うべき音源は、世界各国に多数存在する。そしてそれは、ものによっては、「人類の至宝」といってよい輝きを有している。
ところが、世界的なレコード・CD市場の急速な縮小・崩壊によって、一般ユーザーであれ専門家であれ、そうした音源にアクセスし得る可能性がどんどん小さくなっている。
以前から、私は、そのことを指摘し続けてきたが、最近、その傾向は、もはや末期的と言って良い。
20〜30年前までは、いつでも入手でき、いつでも楽しめた有名音源すら、今では、途方もない苦労をしなければ入手不能なことが多い。
仮に、往年の愛好家に人気の、レオ・スレザークの歌うシューマンの「胡桃の木」を聴きたいと思い、しかも、通常の方法で入手困難とわかったら、いったいどうすれば良いか?
私だったら、タワーレコード渋谷店6階のクラシック売り場に行って、以前からお世話になっているクラシック専門の某スタッフに、ムリと承知で拝み倒して、あらゆる方法を駆使して、世界中から探してもらう。そして、もし存在の可能性が見出せたら、強引に発注をかけてもらい、何ヶ月でも待ち続ける。そしてその間も、何度も同店に電話し、かつ足を運び、最新情報を入手しつつ、より可能性の高い方法の有無について相談し続ける。
たった一枚のCDのために、こうした途方もないエネルギーが必要となる。しかも、そういう努力が必要とされる音源があまりにも多過ぎる。
私のような偏執狂的な努力を傾注する人間の数など高が知れているだろうから、世界全体で見れば、文化財とも呼ぶべき貴重な音源が、知らぬ間に埋没し、いつしか消えてゆくのは、避け難い状況であろう。
最近は、なにやら、「世界遺産」ブームである。そうであるならば、いささか荒唐無稽で「遊び」が過ぎるかもしれないが、クラシック音楽に関して、貴重音源を「世界遺産」に認定して、その音源については、世界の誰もが、いつでもアクセスできるようにしておくようにするのも、ひとつの手かもしれない。
もちろん、誰が、どういう基準で何を選ぶかなど、技術的な問題はあるだろうが、少なくとも、今のように、ただ手を拱いて、滅亡を傍観しているより、よほどましだと思うのだが、果たして、いかがだろうか?

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