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「フーテンの寅さん」

私の柴又散策記〜最終章〜

松本壮平

 寅さんの聖地・葛飾柴又に私が引っ越してきたのは2003年12月23日。あれからもうすぐ4年が経過しようとしている。引っ越してきた当初の思い出はいろいろある。ここではその中でも、自分が好きでずっと見続けていた映画の聖地にいるという実感を得ることができたエピソードをふたつご紹介しようと思う。
 引っ越してきたばかりのころは、不慣れなため、あまり家の近所をうろついたりしなかった。近くのコンビニを頼るのは当たり前だが、それ以外に頼ったものがある。前回のコラムでも紹介した、柴又駅前の中華料理店・上海軒だ。初めての店というものは入りにくいのが人情だが、ここは映画に登場したせいか、抵抗なくすんなり入れた。カウンター席のみだが、お昼どきはいつも混み合っている。最近は全席禁煙(そんなに席はないけど)。かつては思い切り吸って思い切り吐けた。大概、チャーハンと餃子を注文する私は、それらが出てくるまで、タバコを吸いながら、テレビを楽しむ。ときどき、私が席についただけで、オバチャンが水とスポーツ新聞を手渡してくれる。別にいつもスポーツ新聞を読んでるわけではないのだが“スポーツ新聞が好きそうなアンちゃん”に見えるのだろうか…?
 もうひとつ世話になったもの。近所の銭湯、その名も高乃湯。引っ越し直後、まだガスが使えなかったころ、毎晩風呂に入りに行ったところだ。ここは第9作『男はつらいよ-柴又慕情-』に登場する。登場するといっても、この銭湯自体が映像の中に出てくるわけではない。“とらや”のみなさんの会話の中に出てくるのだ。このときのマドンナは吉永小百合が演じる歌子で、その歌子にピッタリな婿さんがどこかにいないか?というあまりに勝手な会話の中に登場してくる(しかもその場に歌子はいない)。歌子が不幸せだという勝手な決めつけからスタートした会話で、寅さんが「できりゃ、いい婿さんの一人でも捜してやりてぇ…」と言ったのがきっかけだ。
 寅さん:「おいちゃんよぉ、誰かいねぇかい!?心持ちの優しい男がよぉ!」
 おいちゃん:「優しいねえ…。あっ!1丁目の小唄のお師匠さんなんか…」
 寅さん:「ダメだダメだ!!あんな男か女かわからねえヤツ!」
 おいちゃん:「じゃあ、2丁目の風呂屋のせがれ」
 この「2丁目の風呂屋」というのが、まさに私が世話になった銭湯・高乃湯なのだ(とずっと信じている)。ちなみにこれに続く寅さんの台詞は、「おいちゃん、よくそんなこと平気で言えるな。あの幸薄い娘を男風呂の見える番台に座らせて平気か?」であった。さらにおいちゃんの台詞も「じゃあ、3丁目に誰か…」と続くのだが、これに業を煮やした寅さん、「もっと身近にいるだろう!?」と捲し立てる。「なぁさくら。いるだろう?ほら…?」という寅さんに対して、さくらも仕方なく「そうねぇ、いたわねぇ。ウチにもひとり…」。つまり寅さんは歌子の婿に立候補したいのだ。いや、推薦してほしかったわけである。でもなかなか言ってくれないものだから、ついには「僕でしょ!?」と声を荒げてしまうのだ。一同ポカンと呆れ顔。とまあ、長くなったが、この銭湯が会話に登場するシーンの解説である。今でもその銭湯の近くを通るたびにこのシーンを思い出す。そんな曰く付き(?)の銭湯であるが、当時は大人ひとりが400円であった(高っ!!)。今も同じ値段かなー?
 さて、大好評(?)の寅さんコラム、実は今回で終了である。実にタイミングよく、10月27日(土)には「JSMS in SHIBAMATA」が開催される。これを幕引きとして、私の勝手な居住区ネタは終わりとしたい。「お前、そんなこと言って、実はネタ切れなんだろ!?」と言われるかもしれないが、そんな読者諸氏とはぜひ柴又でお会いしたい。言葉で伝わらぬ部分をじっくりお聞かせする。 
(完)

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